2023.3.17
酒場ライターのパリッコさんが千葉県の各地をめぐりながら、新しい千葉の名物料理「黒アヒージョ」を、アウトドアで作って食べるシリーズ。第5回は、豊かな自然と、眼下に広がる内房の海、さらに天候次第では、美しい夕焼けや満点の星空も楽しめる「ほしふるキャンプ場」が舞台。
いよいよ、アウトドアで黒アヒージョ作りを楽しむこのシリーズも最終回。今回は、鋸南富山インターより車で3分、さらに車で5分の場所には「道の駅 富楽里とみやま」があり、気軽に本格キャンプが楽しめる「ほしふるキャンプ場」へとやって来た。
その名のとおり、天気がよければ満点の星空による天然のプラネタリウムが頭上に広がり、小高い「ほしふるエリア」からは、はるか眼下に内房の海も見渡せる。その他、豊かな自然のなか、エリアによってさまざまなスタイルでアウトドアが楽しめ、それでいて水場やトイレ、シャワーなどの設備も充実。日常を忘れ、静かな時間を過ごすには最高のキャンプ場だ。
千葉県での黒アヒージョ作りもこれで最後(いや、プライベートでは相変わらずやると思いますが)。今回は、夕方〜夜にかけての風景の移り変わりを堪能しつつ、じっくりのんびり、楽しむことにしよう。
そして、これまでは海産物が中心だったが、千葉県には美味しい肉だってたくさんある。そこで今回は、あらかじめ千葉県産「いも豚」の粗挽きウインナーをゲットしておいて持参した。
いも豚とはその名のとおり、さつまいもを中心としたデンプン質の多いいも類を配合した飼料で飼育された豚のこと。そのデンプン質が体内で良質な脂に変わることで、脂身は甘くとろけ、赤身はジューシーで旨味たっぷりの肉質になるのだとか。
その味をなるべくシンプルに味わうため、合わせる食材は千葉県産の葉玉ねぎとじゃがいもの2種類だけ。つまりは“ジャーマンポテト風”というわけで、まぁ、美味しくならないはずはないだろう。
というわけで、アヒージョ用に買ってきた食材はこちら。
・いも豚粗挽きウインナー
・葉玉ねぎ
・じゃがいも
まずは材料を適度な大きさにカットしてゆく。ジャガイモはよく洗って芽をとって、皮つきのまま。葉玉ねぎは、根元部分はもちろん、柔らかい青い葉も残さず使う。そしていも豚ウインナー。これもてきとうな大きさにカットするだけだから究極に簡単だ。
そうしたらいつものようにクッカーに食材を詰め、オリーブオイルを流し込む。今回は、じゃがいもにじっくりと火を通しつつ、ウインナーから出る豚肉の旨味を染み込ませたいので、ここで火をつけ、低温の状態から温めてゆく。時間はまだまだある。刻々と移りゆく景色と、アヒージョから立ち上るいい香りがビールのつまみだ。
鍋がぐつぐつとしだしたら、いつもの醤油を加えてまたしばし待つ。
気づけば遠く海の上の空は、ドラマチックな夕焼けのグラデーションを描いていた。試しにじゃがいもにフォークを刺してみると、よし、火は通ってるようだ。
いざ、ウインナー、じゃがいも、葉玉ねぎを一緒にすくって、ぱくり。いも豚の旨味が力強く、粗挽きの食感もいい。じゃがいもはほっくりと、ねぎはとろとろに火が通り、これまた、それぞれに素材の味が濃い。
これはビールだ! 今まで作ってきたアヒージョのなかでも、いちばんビールに合うんじゃないだろうか。まぁ、食材の組み合わせからいって当然か。
なんて感じで楽しんでいたら、冬の空が暮れるスピードは早く、あっという間に空は真っ暗になってしまった。あいにく今日は雲が多いが、それでも東京で見るよりずっときらきらと、雲間に星が輝いている。海辺を見下ろすと、海岸線に沿って人々の暮らしの灯りが、これまたきらめいている。
あらためて、広い広い千葉県にはさまざまな表情があって、美味しいものがあって、楽しみかたがあるな。僕の住む東京都のお隣ということもあり、きっとこれからも通い続けることだろう。
ほしふるキャンプ場
住所
千葉県安房郡鋸南町下佐久間1563
アクセス
鋸南富山インターから車で約3分